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第5章 興奮する体
不安、そして焦り。
独りきりの部屋で布団の中から天井の闇を見詰め、三郎はため息をついた。
学校には自分と同世代の少年しかいない。その中では、少なくとも運動に関しては自分は優秀だった。でもここでは劣等生だ。それも断トツで、ビリらしい。
(光……でも俺、絶対おまえを助けるからな)
光は今何処にいるのだろう。
世界を繋ぐというこの地にいるのか、それとももう、龍の世界へ連れ去られてしまったのか。
そもそも戦士ではない光が、何故あの封印の地にいたのだろう。
光はあの巨岩の下にこんな世界が広がっていることを知っていたのだろうか?
わからない。わかるわけがない。三郎は、ほとんど何も知らない。
しかし三郎は、何も教えずいなくなってしまった父親を責める気にはなれなかった。
岩の向こうに龍がいる、おまえはそれを退治する戦士だなんて言われても、信じられるわけがない。だから父は、そんな不確実な話よりも母との愛を信じて駆け落ちしたのだろう。
(俺と同じ年だったんだよな……)
18歳で女を連れて家を出るなんて、三郎には考えられない。
三郎はまだ真剣に恋したことすらない。
(そんなに母さんのこと好きだったのかな……)
19で三郎を産んだ母はまだ若く美しいと皆に言われる。
でも女としての母親の魅力なんてわからない。
母は、母だ。
(母さん……)
母の顔を思い出したら、急に寂しくなってきた。溢れてきた涙を慌てて拭ったが、止まらない。泣いている所なんて、絶対他の戦士達に見られたくない。三郎は、部屋の明かりを消すと、頭まで布団を被って枕に顔を押しつけたが、そんな自分が情けなくて益々泣けてくる。
寂しくて、悔しくて、泣いている間に三郎は眠りに落ちていった。
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