第28章 王の裁き

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「一郎様は……」 「ねえ、早く調べて、黄龍は今何処?」 黄二は四郎と五郎を押しのけて駆け寄ってきた山吹を優しく抱き留めて答えた。 「ちょっと待って、龍に聞いてみる。実の子じゃないから少し時間が掛かるよ。ああ、一郎くんは大丈夫、今寝てるから」 そう言うと黄二は山吹から離れて静かに目を閉じ、黄色い砂漠にいる自分の龍に意識を集中した。未婚の黄二は別の黄色い龍人から引き継いだ黄色い龍を数頭保有している。実の親子のように完全に感覚を共有することは出来ないが、集中すればある程度龍が見聞きしているものを感じることは出来る。 黄二の龍達は砂漠の端に逃げたようで黄一の姿は見えなかったが、荒れ狂う黄龍の龍達の鳴き声は聞こえた。それにしばらく耳を傾けた後、黄二は山吹に尋ねた。 「黄龍は、出掛ける前に何か言ってた?」 「今日は帰って来られないかもしれないって……」 「それで食事は?」 「したよ」 「変わった様子はなかった?」 「いつもと同じだったよ。優しくて、丁寧で、山吹は本当に可愛いねって……」 「そう」 黄二は優しく頷いたが笑顔ではなかった。その顔を見上げながら、山吹は恐る恐る尋ねた。 「ねえ、黄龍は?」 「山吹ちゃん、龍の声聞いたでしょ。龍があんな風に鳴くのは……親を失った時だけだ」
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