第28章 王の裁き

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そうだ。本当はわかっていた。 黄龍はもうこの世の何処にもいない。 もう二度と抱きしめてくれない。 山吹は自分で自分を抱きしめて膝を落とすと大声で泣き出した。 「え、どないした? 黄龍さんに何か……」 四郎が放っておけずに駆け寄ると、山吹はその手が肩に触れる前に立ち上がって叫んだ。 「お前達のせいだ! お前達が来なければこんなことにならなかった。人間なんて潔く滅ぼされればいい」 山吹は収めていた剣を抜き四郎に斬りかかった。五郎は慌てて四郎の体を後ろに引き、黄二は山吹を羽交い締めにして止めた。 「放してよ。今ならまだ間に合うかもしれない。こいつら全員銀龍様に差し出したら……」 「無理だ。こうなったのは彼等のせいじゃない、悪いのは俺だ。君を巻き込んでしまって本当にすまない」 山吹は押さえ込もうとする黄二になおしばらく抗った後、その腕の中で震え始めた。 「違うよ。僕だ。あの時黄二を呼ばなければ……そもそも大人しく城にいればよかったんだ。外に出るなって黄龍に言われたのに、僕は……僕が悪い……僕が……黄龍を……」 「山吹ちゃん、しっかりするんだ、山吹ちゃん!」 呼吸が乱れ、目がうつろになり、とうとう山吹は意識を失った。その体を一番近い五郎の部屋の布団に寝かせると、黄二は四郎と五郎に黄龍の身に起こったことを説明した。 「一郎くんを逃がし、青二を助け、俺を野放しにした。裁かれて当然だけど、まさか消されるとはね。黄龍を引き継ぐ能力がある男はまだ学生だから国を脅かすような粛正はないだろうと思っていたけれど、甘かったよ」 黄二は、意識を失っても涙を流し続けている山吹の頬を指で拭った。
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