第28章 王の裁き

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「山吹ちゃん、どないするんです?」 「自分で黄色い国に帰ってくれればいいけど、帰らないって言うだろうね」 「えっ帰ればいいて……」 「貴人は裁かれない。新しい長がきっと可愛がってくれる。悪いけどしばらく面倒をみてやってくれ。仕事が済んだら連れて帰るから」 「ええっちょい待っ……」 「また僕から逃げる気?」 慌てて止めようとした四郎より先に、山吹が黄二の腕を掴んだ。濡れた睫の隙間から恨めしそうに見つめられて黄二が目を逸らすと、山吹はその巨体を引き倒し馬乗りになった。 「うわっ」 「黄龍ならともかく、あんなガキで我慢しろって酷すぎるでしょ」 転送紋を描けないよう、山吹は黄二の両手に指を絡めて訴えた。 「黄一だって引継ぎが終われば別人のように逞しい男になるよ」 つれない態度の黄二の手を握りしめて山吹は叫んだ。 「僕の何が気に入らないんだよ。黄二が素直に僕と結婚していれば黄龍はきっと死なずにすんだ」 青い国で黄色い花を身に纏って生まれた山吹は、黄二の許嫁として黄色い国にやって来た。黄二は一目で山吹を気に入ったが、だからこそ妊娠させたら殺してしまうのではないかと恐れて手を出せなかった。しかし食事を与えなくても山吹は死んでしまう。貴人を譲り渡してくれた青龍の好意を無にして青い国に帰すわけにも行かず、やむなく黄龍が引き取ったのだ。 黄二の頬にパラパラと山吹の涙が降って来た。黄二はそっと指を解き、体を起こして山吹を抱き寄せた。
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