第28章 王の裁き

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「ごめんね。前にも言ったけど、山吹ちゃんは何も悪くない。完璧だ。俺が拒んでるのは君じゃないんだ」 黄二は山吹の背を撫でながら、四郎と目を合わせた。それを邪魔だという意味に取った四郎が五郎を連れて出て行こうとすると、黄二は彼らに向かって叫んだ。 「俺は人間界に憧れている」 背を向けていた四郎が驚いて振り返ると、黄二は続けた。 「龍なしで生きられるなんて素晴らしい。人間はむしろ龍人の進化形態かもしれない。人間界をまるごと消去するなんて乱暴すぎる」 「ほんなら黄二さんから龍王様にそう言うて下さいよ」 「言っても無駄だ」 久しぶりに聞いた美声に、四郎は振り返った。そこには、また一回り大きくなり全身から光を発する一郎がいた。 「黄龍を消したのが龍王の答えだろう。もう少し猶予をくれるかと思っていたが……三郎はどうした?」 「あ……それが……」 三郎が龍王を追って龍に飛び乗ったまま帰ってこないことを一郎は知らない。四郎が説明しようとすると、五郎が先に頭を下げた。 「申し訳ございません。三郎は龍王に直訴する為に龍王と共に龍に乗って行ってしまいました」 「なんだって? あいつは今龍人界にいるのか?」 「はい。恐らく」 返事を聞いた一郎は愕然として近くの椅子に腰を下ろすと頭を抱えた。
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