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「色んな匂いがする。相変わらず桜の匂いもするし……あんた、爪はあるの?」
聞かれた一郎は山吹から離れて右手を真横に伸ばすと一度握り締めた手を大きく開いた。すると指先から黄色い爪が飛び出した。
「へえ、黄色なんだ」
「いえ。色はどうにでも出来ます」
手の力を抜いてから再び大きく開くと、爪の色は赤になった。一郎は更に白、青、黒と色を変えて見せた。
「凄い、こんなの初めて見た」
しかし山吹が驚き感心する一方、黄二は浮かない顔で一郎を眺めていた。それに気づいた一郎は尋ねた。
「これではダメなのですね?」
「うん……全色統合して金になるのが目標だからね。残ってた肉、全部食べた?」
「はい。まだ足りないってことですか? それともこれが限界ですか?」
「うーん……足りないのか、何かが邪魔しているのか……」
黄二が返事を濁すと、一郎は立ち上がって後ろを向き、上半身裸になって四郎と五郎に背中を見せた。
「四郎、五郎、俺の戦士の証はどうなっている?」
そこにははっきりと龍を一刀両断する証が刻まれていた。
「あります」
「前と同じか? 薄くなってはいないか?」
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