第28章 王の裁き

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一郎がその気になって立ち上がると、五郎が止めた。 「わざわざ黄龍の死を知らせてきたとすれば、龍王は我々が攻め入るのを待ち構えているのではないですか?」 「ああ。捕まるかもしれないな。だがここで大人しく金の龍が育つのを待っていて手遅れになったらどうする? どんなに危険でも、道があるなら俺は進みたい」 「捕まったらおしまいではないですか。だいたい……」 黄二と山吹を信用していいのかと言いかけた五郎を制して一郎は彼等に尋ねた。 「黄二さん達こそ帰ったら危ないのではないですか?」 「そうだね。だけどもう龍の肉がないし、ここにいたら飢え死にする。帰って龍王様の裁きを受けるよ」 黄二が淡々と答えると、山吹は驚いて叫んだ。 「ダメだよ、消されたらどうするの? 黄二までいなくなったら僕はどうしたらいいの?」 「山吹ちゃんは大丈夫だって。ここにいたら山吹ちゃんだって飢え死にするよ? この人達の体は特殊でね。食べなくても生きていられるんだ。でも一郎くんはもう無理かもしれない」 一郎に黄色い砂漠へ行くことを勧めるもう一つの理由を聞いても、五郎は眉を顰めたままだった。それを見て四郎が提案した。 「ほな俺等も行って手伝います。ダメそうやったらすぐ帰ってきたらええし。な、五郎ちゃん、そうしよ」 そんなに簡単な話ではないだろうと五郎は思ったが、四郎にキラキラした目を向けられると否定出来ず、指示を仰ぐように一郎を見上げた。 「ああ、お前達も来い」 「はい、お供します!」 久しぶりに四郎が晴れやかな笑顔を見せた。それを吉兆と信じて、戦士達は黄二と山吹と共に黄色い砂漠に向かった。龍を討伐するのではなく捕獲するという前代未聞の戦いに挑む為に。
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