第29章 新たな長

1/13
前へ
/962ページ
次へ

第29章 新たな長

砂漠には砂嵐を避けられる巨岩の洞窟が点在する。黄二が描いた転送紋から、一郎と五郎は素手、四郎は王の剣を手にその中の一つに入った。 「こっちは嵐じゃないみたいだね」 先程山吹が逃げてきた黄色い国の砂漠と違って世界の狭間にあるこちらの砂漠は静かだ。山吹は岩陰にサソリを見つけて話しかけた。 「ねえ、外はどんな感じ?」 しかし黄色い国の外で生きるサソリは山吹を知らないので、無視して逃げてしまった。 「なんだよ、無愛想だな」 黄二は山吹の肩に手を掛け、彼の前に進み出た。 「私が見てくる」 黄二は独り洞窟の外へ出た。そして自分の龍を探したが、先に見つかったのは黄龍の龍だった。龍は荒れ狂っているわけではなく、ただ静かに岩陰に座っていた。龍の方もすぐに黄二に気づいたが、彼が近づいてくるのをただじっと見ているだけだった。 「黄一から逃げてきたのか。中はどうなっている?」 龍は黙ったまま視線を動かした。黄二も気配を感じて振り返ると、一郎が洞窟から出てきた。 「それが一番強い龍ですか?」 「ああ」 答えを聞くと同時に、一郎は龍に駆け寄り飛び乗った。すると龍は砂に首を突っ込みまるで水に飛び込むように一郎を乗せたまま全身砂漠の中に潜ってしまった。 「一郎さん!」
/962ページ

最初のコメントを投稿しよう!

227人が本棚に入れています
本棚に追加