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四郎と五郎が為す術なく見守っていると、龍はすぐに砂の中から飛び出してきた。一郎はしっかり龍に捕まっている。しかし安心した次の瞬間、龍は空中で高速スピンして一郎をふるい落とした。そして大地に獲物を見つけた猛禽類のごとく一郎めがけて急降下して行く。
「危ない!」
「手を出すな!」
助けに行こうとした四郎と五郎を制し、一郎は寸前の所で身をかわした。
「俺は今、こいつと話をしている」
「へ?」
四郎は首を傾げて五郎と顔を見合わせた。龍の鳴き声は聞こえないし、コミュニケーションを取っているようには見えない。
「龍と男は、血を交わして対話するんだ。周りには聞こえない」
「血を交わすて――」
黄二の説明を聞いて益々戸惑う四郎の目の前に血しぶきが飛んだ。避けそびれた一郎の腕を龍の爪が切り裂いたのだ。四郎は悲鳴を上げて反射的に一郎に駆け寄ろうとしたが、黄二に止められた。
「大丈夫。あれくらいの傷、瞬時に治せる」
その言葉の通り、一郎が反対の手で傷を撫でると赤く染まっていた腕は白い輝きを取り戻した。そして長く鋭い爪を伸ばし、今度は一郎が龍の体を切り裂いた。
「これが対話……?」
「ああ。血に触れて相手を知るんだ」
「そんな――治せないほど大怪我したらどないするんです?」
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