第29章 新たな長

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「それは仕方ない。死を覚悟して戦わなければ龍は手に入らない。龍人の男は、皆そうして最初の龍を手に入れる」 「えっ、自分の子供やなくて?」 「自分の爪で直接龍の肉を食べないと成熟出来ないから結婚より龍を手に入れる方が先だ」 「そうなんや――うわっ!」 四郎の目の前に大量の血しぶきが降ってきた。殺してしまっては意味がないので、一郎は慎重に急所を避けつつ龍にダメージを与えているようだが、一郎も傷を治す間もなく攻撃を受け続けている。 「もう見ていられない」 耐えられなくなった五郎は一郎を止めに向かおうとした。とその時、砂漠の中から黄色い龍が飛び出してきた。一郎が戦っている龍とは別の黄色い龍だ。 「随分暇そうだね。五郎くん、君も挑戦してみたらどうだ?」 黄二を振り返った瞬間、龍は五郎に攻撃を仕掛けてきた。 「五郎ちゃん!」 「四郎、そいつを信用するな。そいつは一郎様が死んでも構わないと思っている」 「え、それは……」 四郎は否定して欲しくて黄二の顔を見たが、彼は一郎の方を見ていた。 「助けてくれ、俺には立派な爪も武器もない」 「へ? あ、そうか」 迷っている場合ではない。四郎は五郎を助けようと剣を構えて飛び出した。すると今度は龍ではなく、山吹が立ちはだかった。
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