第29章 新たな長

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「君は僕が相手してあげるよ」 答える間もなく山吹が剣を振り下ろしてきた。四郎は慌てて剣で防御したが、山吹は次々と剣を繰り出してくる。 「ちょ、山吹ちゃん、俺等が戦うことないやろ」 「だって暇でしょ? 防具がないけど大丈夫、怪我したら黄二が治してくれるよ。でも痛いのは嫌だから一回にしよう。どっちかが怪我したら終了ね」 「そんな乱暴な――うわっ」 王の剣は四郎の斧に比べれば遙かに軽いが、片手で扱うのは難しい。そもそも剣の扱いに慣れない四郎は山吹のスピードについていくのが精一杯だった。 「なんだ、この程度? 君、戦士じゃなかったの?」 「これ俺の武器やないから――てか山吹ちゃん、急に元気になってへん?」 山吹は答えず斬り掛かってきた。交渉の余地はなさそうだ。山吹が言うとおり黄二が自分を助けてくれる保証はないが、山吹は助けるだろうと判断した四郎は、山吹への気遣いを一切止めて龍に向かう気持ちで戦い始めた。そして真剣勝負を続けていると、また頭上から血が降ってきた。 「キャッ!」 山吹は驚いて逃げたが、四郎はそれを避けそびれた。 「アチッ」 肩にべったりついた黄色い液体は高温で湯気が出ている。四郎は慌てて着物を緩めて肩から外した。するとそこには液体だけでなく、肉片がついていた。ピンと閃いた四郎は熱さを忘れて肉を掴むと五郎に向かって投げた。 「五郎ちゃん、龍の肉や!」
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