第29章 新たな長

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五郎が龍の攻撃をかわして四郎が投げた肉をつかみ取り呑み込むと、それを見ていた一郎が更に大きな肉片を落としてきた。五郎はその肉も両手で受け止めると、素早く口に入れた。すると五郎の体は黄色く光り始めたが、急激な変化に耐えられず、五郎はその場に倒れ苦しみ始めた。 「ウオオオオオ!」 「五郎ちゃん!」 四郎が五郎に駆け寄ろうとした時、砂の大地が揺れ始めた。地の底から何かがやって来る気配に、空中で戦っていた龍も動きを止め身構えた。揺れはどんどん激しくなる。立っていられなくなった四郎が膝を落とすと、目の前に砂が吹き上がった。勢いよく吹き出した砂が滝となって大地に戻ると、砂のベールの中から黒い龍が現れた。 それは四郎達が沼で戦った黒い龍とはまるで違う細身の体型で、とりわけ大きくもなかったが、五郎に仕向けられていた黄色い龍は目が合っただけで砂の中へ逃げ帰った。一郎は、黄色い龍が黒い龍に気を取られた隙に首に爪を突き立て食用の肉を取り出すことに成功したが、その黄色い龍も、黒い龍が向かってくると一郎を乗せたまま逃げ出した。 「一郎さん!」 呼びかける四郎を振り返る間もなく、一郎は黄色い龍と共に空の彼方へ消えてしまった。それを呆然と見送った四郎は、依然苦しみもがき続けている五郎に駆け寄った。 「五郎ちゃん! 五郎ちゃん、しっかりしてや」 強大な黄色い龍が一目散に逃げ出す程の力を持つ黒い龍がすぐ近くにいることなど全く気にせず、四郎が必死に五郎に呼びかけていると、黒い龍から龍人が降り立った。 黒二だ。彼は四郎と五郎を見つめながら黄二に尋ねた。 「彼等は?」 「人間界から来た戦士です」
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