第29章 新たな長

9/13
前へ
/962ページ
次へ
「選べないなら私が決める」 黒二は五郎の体を左手で掴み上げると、右手の爪を伸ばして胸元を突き刺した。四郎は悲鳴を上げて止めようとしたが、体が動かなかった。目を閉じることも出来ずこちらを見ている四郎の目の前で、黒二は五郎の体内から龍の肉の塊を取り出してじっくり眺めた後、黒い龍を呼び寄せて、その体から肉を取り出した。それを自分で食べた後、黒二は五郎に口づけた。長く濃厚な口づけを受けた五郎の体はみるみる黒くなり、生気を抜き取られているのではないかと四郎は声にならない悲鳴をあげたが、よく見ると違った。 確かに色は黒いが、肌艶は増している。 そして黒二が唇を離した時、五郎は黒い龍人になって自分の足で立っていた。すっかり別人になった五郎は、驚いて声が出せない四郎の方を見ることもなく黒二が描いた転送紋の中に入って行った。 「五郎ちゃん!」 ようやく体が自由になった四郎が叫んだ時にはもう、五郎は転送紋の向こうへ消えてしまっていた。 「彼には黒い国で暮らして貰う」 でも、五郎は助かった。ホッとした四郎の体から力が抜けた。黒二は倒れた四郎を抱き上げたまま龍の背に乗り、黄色い国の城に向かった。城に着くと、黄色い男達が黒二を迎え入れ丁重に挨拶した。 「龍達は落ち着いたようだな。黄一はどうした?」 「引継ぎに成功した龍を食べたので、体の方はもう心配ありません。ただ黄龍になれなかったことがショックだったようで……」 「体に問題ないなら学校に戻して教師に預ければいい」 「かしこまりました」 黄色い男達を下がらせると、黒二は黒龍に連絡を取った。
/962ページ

最初のコメントを投稿しよう!

227人が本棚に入れています
本棚に追加