第29章 新たな長

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『おう。頑張れよ』 黒龍の像が消えると、黒二は城に入った時に世話係に預けた四郎の様子を見に行った。 四郎は、突然暴れ出したとしても怪我をしないように例の綿菓子をくりぬいたような部屋に入れられていた。そこで独り目覚めた四郎はかつて緑の男達に陵辱された記憶が蘇って部屋の隅で震えていたが、黒二が入ってくると更に身を縮めた。 「何をそんなに怯えている?」 黒二は返事をしない四郎に近づき、そっと頭に手を置いて答えを探り出した。 「そうか。では部屋を変えよう」 トンと肩を押されて背後の壁をすり抜けた四郎は、黄色が基調の明るく華やかな部屋のベッドの上で顔を上げた。 「したくないなら食事は与えないから、安心しろ」 そう言うと、黒二は四郎と目を合わせることなくベッドに腰掛けた。四郎は見覚えのない金髪の男の背中をしばらくぼんやりと見つめていたが、ようやく気づいて声に出した。 「もしかして……さっきの方ですか?」 「ああ、この国にふさわしい色に変えた。私は特異体質でね。私の中には全ての色がある。だからどうにでも変えられる」 振り向いた黒二は、白い肌に青い目、赤い唇、眉と睫と髪は黄色になっていた。 「へえ。凄いですね」 四郎の顔から怯えが消えたのを見た黒二は、すっと手を伸ばして四郎につけた首輪を外し、代わりにラリエットを額につけた。 「これは自由に外せるが、そう邪魔になるものではないからずっと付けていた方が良い。これ無しで外に出たら目がやられる」
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