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黒二の家は城のすぐ隣だが、どちらの敷地も広大なので転送ゲートを使うのが常だ。しかし黒百合は歩いて帰ることにした。
黒い噴水のある中庭を抜けて建物の外へ出ると、深い緑の丘に灰色の道が伸びている。その道を下り城門を出て塀に沿ってしばらく歩くと針葉樹に囲まれた建物が見えてくる。それが黒二の家だ。門にたどり着くと、黒百合は黙ってついてきた五郎に告げた。
「今日からここが君の家だ」
門をくぐると玄関に続く道の両側に黒百合の花が咲いている。黒二がこの家に黒百合を迎え入れる際、黒百合の為に植えた花だ。黒百合はその花と自分を交互に指さして五郎に伝えた。
「黒百合。俺の名前だ。言ってごらん。く、ろ、ゆ、り」
何度か繰り返すと、五郎はやっと口を開いた。
「く……ろ……ゆ……り」
「そう。君の名は、これから調べてみよう」
黒百合は五郎を研究室に連れて行った。よく黒二を手伝っていたので、機器の操作は大体わかる。
「ここに立って、じっとして」
五郎は裸にされ計器をつけられても大人しくしていた。
「まるで人形だね。こんなんで体液採れるかな」
黒百合は五郎の体の中で一番敏感であるはずの場所に取り付けた器具のスイッチを入れた。すると黙りつづけていた五郎が声を漏らした。
「うっ! あ、ああ……」
「へえ。悪くない声だ。もっと聞かせてよ」
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