第30章 黒い国

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翌日、黒百合が学校に行くと、黄色い国の生徒を中心に人が集まっていた。 「あ、黒百合!」 気が進まなかったが無視するわけにもいかず、黒百合は話の輪に加わった。 「黒い国は大丈夫なの? 昨日黄色い国の長になられた方は黒い国の副長だったのでしょう?」 その副長と共に暮らしていたことはその場にいる貴人達に話してはいなかったので、黒百合は淡々と答えた。 「ああ、男の人達はしばらく大変そうだけど、沼は荒れていないよ。黄色い国は大変だったね」 「うん、凄い嵐で僕達は地下に避難したんだけど、男の人達がなかなか戻って来なくて怖かったよ」 「それで皆無事だったの?」 「怪我した人もいたけど、新しい長がすぐに治してくれたみたい。今度の長は凄いって皆言ってる」 それを聞いた黒百合は思わず眉を寄せ、周りに気づかれぬ内に表情を戻そうとしたが、三郎と目が合ってしまった。黒百合はゆっくり視線を三郎から他の生徒達に移して言った。 「皆無事で良かったね。そろそろ先生がいらっしゃる。席に着こう」 その言葉通りすぐに担任教師の蘭が現れた。そしていつもの挨拶に答えた後言った。 「今日は時間割を変更して大切な話をします。もう皆さん知っているようですが、昨日黄龍様が昇天なさり、黒二様が黄色い国の新しい長になられました。黒二様はお名前の通り黒い力が最もお強いですが、黄色い国の長たるに十分な黄色い力も備えていらっしゃる希有なお方です」 「先生」
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