第30章 黒い国

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一行は黒二の家とは反対方向の門から城を出た。沼のある方向だ。 「沼に行くのですか?」 「ああ。黒百合、おまえ行ったことあるか?」 「いえ。窓から見たことしかありません」 黒い龍人から食事を与えられている貴人なら沼に落ちても体が溶けたりはしないが、溺れる危険があるから決して近づくなと言われてきた。 「じゃあ黒い龍も見たことないか」 「ええ。実物は」 映像なら授業で見たことがある。実際の半分以下の大きさで再現された立体映像だったがクラスの生徒達は皆怖がっていた。三郎はその時にはまだ入学していなかったので映像でも見たことがないに違いないと思った黒百合は、三郎に問いかけた。 「菊は、赤い龍を見たことある?」 「うん。飛んでるからね」 「そうか。黒い龍は赤い龍とは全然違うよ。黒龍様、菊に見せたいと仰るのは……」 「ああ、黒い龍だ。お前達より小さな赤ちゃんのな」 「え、黒法師様が出産なさったのですか?」 「ああ」 黒百合は前を歩いていた黒龍に駆け寄り祝いの言葉を述べた。 「おめでとうございます。黒法師様はご無事で?」
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