第5章 興奮する体

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「赤い谷?」 「昨日一郎さんが出した龍の餌場や。植物も動物も、皆真っ赤らしいで」 三郎は、一面赤く染まった谷を想像してみた。 「ふーん、綺麗そうだね」 「アホか。紅葉とちゃうで? デカイムカデとかハエとかおるんやて」 虫が嫌いらしい四郎は自分で言った言葉に鳥肌を立てた。 「餌場の掃除って、龍はもういないってこと?」 「ああ、おったとしても子供やろうて」 ムカデやハエは三郎も好きではない。ムカデと戦うくらいなら、留守番の方がいいかもしれない。そう考えながら部屋の前に戻ると、四郎は言った。 「早う武器取って来い」 「え、いきなり早朝稽古?」 「他にすることないやろ」 「飯は?」 「中庭に井戸があったやろ。あの水飲んどけ」 「ええ!? それだけじゃ――」 言いかけて、ふと気付いた。そう言えば、腹は減っていない。 昨夜夕飯も食べずに家を飛び出して以来、何も食べていないのに。
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