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「無事なわけがないだろう。龍宮が大きく裂けてしまった。出来る限りの処置をして眠らせた。後はあいつの力を信じるしかない」
龍宮とは男を介して取り込んだ龍のエネルギーを吸収すると同時に龍を宿す、貴人の体の中で最も重要な器官だ。出産時に無傷で済むことは稀だが、その治療は龍王でさえ不可能で、残された本人の力で修復出来なければ命を落とす。黒百合が深刻な表情で俯いてしまうと、黒龍は慌てて肩を抱き慰めた。
「ああ、すまねえな。おまえが落ち込むことはない。大丈夫だ。あいつならきっと回復する。立派な黒い龍が生まれたんだ。一緒に喜んでくれ」
黒龍は黒百合に優しく話しかけた後、黙ってついて来ていた三郎を振り返り声を掛けた。
「おまえもな。黒い龍の赤ん坊なんて滅多に見られるもんじゃねえ。その目でしっかり見てやってくれ」
「……はい」
そして黒龍は3つある内で一番小さな沼に2人を案内した。
「そこで待ってろ」
少し離れた場所に2人を立たせると、黒龍は沼の淵に座り込み龍を呼んだ。貴人にはほとんど聞き取れない低い声で、聞こえても意味のわからない龍の言葉だ。すると沼から黒い頭が飛び出して来た。
「うわっ!」
三郎は驚いて黒百合の背に隠れた。現れたのは生まれたばかりの黒い龍だったが、三郎が想像していたより遥かに大きく、その姿はお世辞にも可愛いとは言い難かった。
「ほら、お前達、こっちへ来てみろ」
そう言われても近づく気になれず2人が立ち尽くしていると、龍が呼びかけてきた。
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