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「ピキュウ!」
それは容姿に似合わぬ高い声だった。そして龍は小さくて短い手をちょこんと沼から出して、こっちへ来いというように沼の淵を叩いた。
「可愛い!」
そう叫ぶと、黒百合は龍に駆け寄った。
「ピキュピキュウ!」
龍は再び嬉しそうに鳴いて沼から出ようとしたが、まだ力が弱く自力で這い出すことが出来ない。
「抱いてもいいですか?」
「いや、おまえの力じゃ――ちょっと待て」
黒龍が龍を沼から引き上げた。生まれたばかりだというのに、龍はもう全長1メートルを超えていた。
「重いから気をつけろ。絶対落とすなよ」
「はい」
黒百合は慎重に黒龍の腕から自分の胸に龍を抱き寄せた。
「ほんとだ、重い。でも気持ちいい」
龍に頬刷りする黒百合と、それを見守る黒龍は、まるで夫婦のようだ。美しい2人に大切に扱われている龍もだんだん美しく見えてきて、三郎は2人に近づいた。全身真っ黒なので遠目にはよくわからなかったが、近くで見ると龍の丸く大きな目はキラキラと輝き、大きな口の端はキュッと上がっている。
「黒い龍も可愛いだろ、触ってみたら?」
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