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確かに言われて見れば可愛いかもしれない。三郎はそっと手を伸ばして龍の頭に触れてみた。
「うわっ、柔らかい」
「生まれたてだからね。大人はもっと硬いですよね?」
「ああ。ぶつかったら怪我するから隔離している」
龍と戦った事実は封印されているが、実際に見た龍の姿は知識として残されているので、黒龍と黒百合の会話を聞いただけで三郎の頭の中に大人の黒い龍の姿が浮かび上がってきた。この子もやがてその姿になると思うと急に恐ろしくなった三郎は、龍から手を放した。
「どうかした?」
「あ、いや……」
三郎が、放した右手を左手で包んで俯くと、黒龍が腕を掴んできた。
「手が痛いのか? 見せてみろ」
「え、あの……」
黒龍は、大きな手の上に三郎の掌を広げ、反対の手ですっぽり包み込んだ。
「龍のせいじゃないな。今日、剣術でもやったか?」
「あ、はい」
三郎が言い当てられて驚いている間に、黒龍は三郎の手の上に重ねていた手を掌から肩まですっと滑らせた。
「あっ」
感じて思わず声を漏らしてしまい恥ずかしさで赤くなった三郎の耳に、黒龍は囁いた。
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