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「これで楽になっただろう。後は赤二にやってもらえ」
特に疲れを意識してはいなかったが腕が軽くなったことを感じた三郎は、感激して黒龍を見上げた。
「すっかり楽になりました。ありがとうございます」
今度こそ笑みをくれるかと思ったが、黒龍は三郎の視線を避けて黒百合に話しかけた。
「体が乾ききってしまう。そろそろ沼に戻してやろう」
「はい」
黒龍は黒百合から龍を受け取り静かに沼に戻すと、龍の言葉で話しかけた。すると龍は元気に返事をして沼に潜って行ったが、何かを口に咥えてすぐに戻って来た。コンクリートの欠片のような灰色の塊だ。黒龍はそれを受け取り2人に見せた。
「これはあの子の排泄物だ。力のかけ方次第であらゆる物に変化する。見てろ」
黒龍が手を重ねて押すと、それは硬化して艶やかな石になったが、ギュッと握りしめるとゴムのように変形し、更に圧力を掛けると液体になった。そしてそれが掌からこぼれ落ちる前に黒龍が息を吹きかけると、シャボン玉になって飛んでいった。
「凄い」
舞い上がりはじけるシャボン玉を見上げながら三郎が拍手している間に、黒龍は龍から先程より濃い灰色の塊を受け取った。
「お前達、ちょっと離れてろ」
黒龍はそう言うと、渾身の力で塊を握りしめた。
「ウリャー!」
黒龍の足下から黒い炎が立ち上り渦を巻く。三郎が吹き付ける風に思わず閉じた目を開くと、黒龍は目の前に突き出していた手を開いた。
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