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「土産だ。受け取れ」
それは黒く輝く宝石だった。三郎は、素直に手に取りじっと眺めた。
「綺麗……」
「赤い国の宝石と合わせてお前に似合う装飾品に加工してもらえ」
「頂いていいのですか? ありがとうございます」
歓迎されていないのではないかと不安だった三郎は安心して満面の笑みで礼を言ったが、黒龍はまだ笑ってくれなかった。しかし今度は目を逸らさず、じっと三郎を見つめたまま言った。
「つい最近、最初の妻が産んだ子を亡くしてな。おまえを見てると、その子を思い出す」
「え……」
突然の話に驚いた顔をした三郎を見て我に返った黒龍は、チッと舌打ちして頭を掻いた。
「ああ、余計なことを言った。気にするな、城へ戻るぞ」
黒龍は城への転送紋を描き始めたが、三郎がそれを制した。
「その前に教えて下さい。黄色い国で何が起こったのですか?」
「蘭から聞かなかったのか?」
「詳しいことは話せないと仰って――でも俺、知りたいんです」
黒龍はしばらく黙って三郎を見つめた後、黒百合に尋ねた。
「黒百合、おまえはどうだ。知りたいか?」
すると黒百合は即座に答えた。
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