第30章 黒い国

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黒龍は突然話を止め、急いで転送紋を描いた。 「話は後だ。黒法師が目を覚ました」 2人を促して城に戻ると、黒龍は2人を置いて妻の元へ行ってしまった。 「お話が聞けて良かったね。菊はどうする、もう帰る? それともせっかくだからウチに寄っていく?」 三郎は返事をせず、黒龍が消えた方向をぼんやり眺めていた。 「菊?」 黒百合が顔を覗き込んでも目を合わせず、三郎は独り言のように言った。 「ねえ、さっきのどういう意味だろう」 「さっきのって?」 「俺を見ると死んだ龍を思い出すって。俺がその龍を産んだ人に似てるってこと?」 「どうだろう、俺もその方のお姿は見たことがない。忘れてくれっておっしゃったんだから忘れようよ。よくわからないけど、辛い思い出だってことは確かなんだから」 「うん……そうだね」 黒百合は、納得いかない表情のまましぶしぶ答えた三郎の肩を抱いた。 「やっぱりウチに寄って行きなよ。こっちだよ」 黒百合は三郎を連れて家に帰った。転送ゲートを使ったので、いきなり玄関ホールに着いた。床と壁の下の方は黒いが丁度目の高さ位から半透明の黒になり、吹き抜けの天井は光の束のように真っ白だ。 「お城とは別の建物なんだね」
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