第30章 黒い国

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「ああ。研究所を兼ねているんだ」 「へえ。カッコイイね」 「俺の部屋はこっちだ」 黒百合は三郎の手を取り部屋に案内した。 「わあ、凄い」 三郎は黒百合の花をモチーフにした装飾で縁取られた窓辺に駆け寄った。窓の向こうには緑の木々と色とりどりの花が見える。 「中庭?」 「いや。研究材料を栽培している温室だよ」 「研究材料なのか。でも綺麗だね」 しばし窓の外を眺めた後、三郎が振り返ると、黒百合はティーカップを差し出した。 「はい、どうぞ。君の為に調合したお茶だよ。菊の香りがするだろ?」 匂いを嗅いでみると、確かに菊の香りがした。三郎はその茶褐色の液体を一口すすった。 「うん、美味しい。でも俺の為に調号って……いつの間に?」 「初めて会った日に約束しただろ。ウチに来たらお茶会について教えてあげるって。今日の為に準備しておいたんだよ」 「ああ、そんな話したね」 「ここに座って、ゆっくり飲んで」 「ありがとう」
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