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「俺もよう知らんけど、ここにいる限り腹は減らないらしい。喉も渇かないらしいけど、口寂しければ透明な水は飲んでもええて。それ以外のものは一切口にしたらあかん言われとる。トイレも元の世界で飲み食いした分出し切ったら行かなくて済むらしいで」
トイレに行かなくてすむのは便利だ。でも食事をしなくても済むのは、楽だけれどつまらない。慣れるまで口寂しくなりそうだ。ガムでも持ってくるんだったと思いながら、三郎は答えた。
「口にしたくても、何もないじゃん」
「城にはな。例えば赤い谷にはあるんやないか? 禁断の果実とか」
「食ったらどうなるの?」
「わからんから食うなって言うんやろ」
「なんだ、わかんないのか」
「おまえ……」
四郎は呆れてため息をついたが、受け流して訓練場に向かった。
「昨日一郎さんは強制的に龍出しはったけど、そうやなければ分相応の龍が出てくるんやて」
「ええ? そんなのわかるの?」
「知らんわ。とりあえず、三郎入ってみ」
三郎は疑いつつ訓練場に足を踏み入れた。すると微かに風を感じると同時に奥で何か動いた。ゆっくりと現れたのは灰色の龍だった。
「なんだよ、またおまえか!」
同じ龍かどうかはわからないが、昨日倒したのと同じ子供の龍だ。四郎は笑った。
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