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「大丈夫。俺は好きだよ」
「黒百合……」
好きだよと微笑み掛けてもらうと懐かしい感じがしたが、やはり具体的なことは何一つ思い出せない。無駄に遠くを振り返ることを止めて、三郎は今朝黒百合に言いかけたことを思い出した。
「ねえ黒二様ってここから黄色い国に通ってるの?」
「まさか。あの方は黄色い国の長になられたのだから、黄色い国にいるよ。落ち着くまで黄色い国から出られないみたい」
「じゃあ黒百合が黄色い国に行くの?」
「行かないよ。黒二様は特別な能力のある方で、今はまるで黄龍様のような姿になられている。俺にはもう消化出来ない」
「え、じゃあ食事はどうするの?」
「昨日から別の男と暮らしている」
「そう……なんだ」
なんと言葉を返したら良いのかわからず三郎は俯いて黙った。
「黒二様は特別な方だから、急に別れることになるかもしれないって言われてたんだ。覚悟してても現実になるとキツいけど、仕方ない」
もし自分の身に同じ事が起こったらどうしようと考えると無性に赤二が恋しくなって、三郎は言った。
「そう……。あの俺、そろそろ帰らないと」
「じゃあ転送ゲートまで送るよ」
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