第30章 黒い国

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黒百合は三郎を連れて玄関に向かった。すると丁度五郎が帰ってきた。 「お帰り」 黒百合は微笑んで五郎を迎えたが、五郎は真顔のまま隣に立つ三郎を見た。 「同じクラスの友達が遊びに来てたんだ。もう帰る所だけど」 「はじめまして。菊です」 黒い龍人になった五郎は、例え記憶が封印されていなかったとしても気づけないに違いない程変貌していたので三郎は何も感じることなく挨拶したが、五郎は三郎を見つめたまま黙っていた。 「ああ……彼はちょっと言葉が――」 まだ話せないのかもしれないと思った黒百合が説明しようとすると、五郎はようやく口を開いた。 「はじめまして。黒五です」 五郎は挨拶した後確認するように黒百合と目を合わせた。黒百合は頷いて言った。 「彼を城のゲートまで送ってくるね」 「お邪魔しました。失礼します」 互いに気付くことなく2人はすれ違い、三郎は黒龍の城の転送ゲートに戻った。 「じゃあまた――」 「ちょっと待って。黒龍様に挨拶していった方がいいな」 帰ろうとした三郎を引き留めて、黒百合は黒龍の部屋の前に連れて行った。 「黒龍様、いらっしゃいますか?」
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