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2人が一礼して部屋を出るとすぐに入口がふさがれたが、中の話し声は漏れてきた。
「あなたももうお戻りになって」
「追い出すなよ。眠るまで側にいさせてくれ」
それを聞いた三郎は微笑んで言った。
「黒龍様、奥様と話す時は全然違うね」
違わない。あれがいつもの黒龍だ。三郎にだけ厳しいのは他国の貴人に舐められたくないからだろうかと思いながら、黒百合は無難に返した。
「ああ。奥様のことを深く愛してらっしゃるんだよ」
そして転送ゲートが並ぶホールに戻ると、三郎は来た時と同じゲートに入ろうとして止められた。
「そっちは学校だよ」
「うん。学校経由で帰ればいいんじゃないの?」
「いや、下校後再び入るには許可がいる」
「え、そうなの? だって今日困ったらいつでも学校に来いって言ってたよね」
「困った時はね。ゲートに入って受付の人と話して認められないと戻される。こっちの赤い国のゲートを赤二様に開けて貰った方がいいよ」
「俺、通信機持ってないし多分まだ家に帰ってないと思う。どうしよう」
他国の友人に誘われた時には直行で国に帰れる場合のみ応じるのが常識だが、三郎がそれを知らないことに気を回せなかった自分を反省しながら、黒百合は赤い国のゲートを眺めた。
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