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三郎が赤龍を睨み付けてそう言い放つと、赤龍は三郎の頭を上から鷲づかみにして唸った。
「そういう台詞はなあ、もっとしおらしい顔で言え」
赤い目で睨まれた三郎が、少し目を潤ませただけで頑なに表情を変えずにいると、ホールに甘い香りが漂ってきた。
「どうかしました?」
赤い宝石を散りばめたドレスを身に纏い、男のように光り輝く貴人が入って来た。赤龍の妻、カンナだ。
「ああカンナ、丁度良い。俺は谷へ戻る。こいつを頼む」
そう言うと、返事も聞かずに赤龍は行ってしまった。カンナは、その背中を見送った後、握りしめた三郎の手を見た。
「何を持っているの?」
「え、ああ……」
三郎が素直に拳を開くと、黒い光があふれ出した。
「これは黒い国の宝石ね。それも最高級品だわ。どうしてあなたが持っているの?」
「そんなに凄い物なんですか? 黒龍様から頂いたんですけど……」
「黒龍様が直々に下さったの?」
カンナは目を見開いた後、三郎に一歩近づき身を屈めて大きく息を吸った。
「あらほんと、あの方の匂いがするわ。あなたそれ、どうするつもり?」
「え……貰っちゃいけなかったんですか? だったら明日黒百合に返して貰いますけど――」
「黒百合。ああ、そういう……黒五っていうのは彼の新しい保護者ね。なるほどね」
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