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質問には答えず、独り納得して頷くカンナに、三郎は首を傾げた。
「黒百合をご存じなんですか?」
「会ったことはないけれど、話は聞いているわ。あなた、あの子を慰めてあげたの? でもそれってどうなのかしらね」
「どうって、何がです?」
また独りでわかっているカンナに三郎が苛立って尋ねると、カンナは笑って手招きした。
「座ってゆっくり話しましょう。私の部屋へいらっしゃい」
カンナの部屋は壁も床も天井も、全て真っ赤だった。全方向から迫り来る赤に圧倒されて立ち尽くした三郎に、カンナは真っ赤な椅子を差し出した。
「ここに座って」
椅子は座った瞬間に三郎の体の線に合わせて変形し、完璧に三郎の体を受け止めるとゆっくり回転し、カンナが立つ壁の方向に向いた。
「窓を開けましょうね」
そう言いながらカンナが壁を軽く叩くと赤が透明に変わり、中庭が見えた。そこには赤い国に咲く全ての花が植えられていて、どの花も皆赤いが、葉の緑を目にして三郎が少し落ち着いたのを確認すると、カンナも椅子に腰掛けて話し始めた。
「まずは私の話を聞いて頂戴。あなたさっき理不尽に怒られてるって思ったでしょう。知らなかったって言うけど、勝手に他国へ行ってはいけない理由、何も思い浮かばない?」
「長か副長にゲートを開けて貰えないと帰れなくなるからでしょう?」
「そうだけど、私が聞いているのは帰れなくなったらどうなるかってことよ」
「え……黒百合の家に泊めて貰って翌朝学校に行けば……」
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