第30章 黒い国

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「そうね。あなたの場合、黒い国なら問題ないでしょう。だから黒百合も気軽に誘ったのね。でもこれが別の国だったら危険な目に遭っていたかもしれないわ。ゲートをくぐるだけで簡単に行けてしまうけれど、空気まで違う場所よ。弱い子は何もしなくても具合が悪くなるわ。そうなっても国に帰ることが出来なかったら、その国の男に治療して貰うしかないでしょう。そうしたら、そのままその男のものにされてしまうかもしれない。それでも治ればいいけれど、もっと具合が悪くなって命を落とす危険性だってあるのよ」 そう言われてもピンとこなかった三郎が黙っていると、カンナは説明を続けた。 「他国に繋がるゲートが開くと、相手の国の空気が流れ込んでくるし、異国の男は存在するだけでこちらの気を乱すの。その度合いを判断したり問題が起こった時に対処出来るのは力のある男だけだから、長か副長にしか開けないのよ。彼等に許可を得るのは恐れ多いから、実質自国と他国を行き来するのは長と副長だけってことよ」 「だからそんなこと知らなかったんです。でもそれじゃあ学校で友達が出来ても卒業したらもう会えないってことですか?」 「そんなことないわ。王都で会えばいいのよ。学校も王都にあるでしょう? あそこは特別な場所で、皆快適に過ごせるの。特別色の男の妻になれば自由に王都へ行けるわ」 「妻になればって……龍を産まないとダメってことですか?」 「ええ。あなたも早く龍を産んで一人前になることね」 中庭に人工の風が吹き、花を揺らした。それはまるでカンナを賞賛し拍手しているように見えた。三郎は絶対的な自信に満ちたカンナから目を逸らして呟いた。 「俺、なんで貴人に生まれちゃったんだろ。男がよかったな」 「どうして? 出産が怖い?」 「そうじゃなくて……ただ守られているのは嫌なんです。黄色い国が外の世界から攻撃を受けたって聞きました。俺も世界を守る為に戦いたいです」 「そんな話誰から……ああ、黒龍様ね」
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