第30章 黒い国

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キマッテルデショウ アイツノセイデスヨ  アイツガイウコトキカナイノハ オサノチカラブソクダッテ 赤龍と最強の赤い龍は最近折り合いが悪い。リーダーである最強の赤い龍が長に対して不信感を抱けば、いずれ龍全体に不信感が広まる。そうなればまず男性に影響が出る。力の弱い男性が龍に襲われる危険が高まるし、力でねじ伏せることは可能でも龍の気持ちは肉に反映されるので栄養価が下がる。最終的には国全体に深刻な悪影響を及ぼしかねない。 仲違いのきっかけは、赤と黒の龍の誕生だ。赤い龍達は気性の荒い異質な龍の隔離を主張したが、赤龍は赤と黒の龍を孤立させれば更に手の付けられない凶暴な龍に育つ危険があると説き伏せて自由にした。そして親である赤二にしっかりしつけさせると言ったのだが、その約束は守られなかった。その上、境界の地に送り込まれた赤い龍が戦士に殺された。誰かに境界の地に行って貰わなければならないと話し合った時、最強の赤い龍は真っ先に名乗り出たのだが、お前が抜ければ谷の秩序が危うくなると赤龍に却下され、優しい老龍が犠牲になったのだ。それ以来益々赤龍と最強の赤い龍との溝は深まった。 長は赤い谷から特別な力を得ることが出来るので、今の所赤龍は最強の赤い龍であっても強引にねじ伏せることは可能だが、それでは問題の根本的な解決にはならない。このような状況が続けば徐々に力を失い、最悪赤い谷に見放される。そうなれば終わりだ。その前にわかり合う必要がある。 (まさか――対話する気か?) 赤と黒の龍を連れてきて謝らせよう、それしかないと赤二が足を踏み出した瞬間、足元が揺れた。最強の龍が雄叫びを上げて舞い上がったのだ。そして赤龍はとうとう両手の爪を長く鋭い赤い刃に変えた。 「兄上!」 そして凄まじい対話が始まった。もはやどうにも出来ずに見守っていた赤二は、背後に赤と黒の龍の気配を感じて振り返った。 オモシロイネ 「おまえ、ふざけるな、また他の龍のエサを横取りしたのか?」 ダッテタイクツナンダモン マタヌマニイキタイナ 「なら黒い国の龍になるか?」
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