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赤龍に睨み付けられた黒二は、軽くため息をついた。
「一体何をお疑いなのです。それとも単純に私がお嫌いですか? 赤二さん、あなたはどうお考えですか?」
急に話を振られた赤二は黒二と一瞬目を合わせた後、赤龍に向かって言った。
「専用の餌場など贅沢過ぎると思っていましたが、この子をここに置いておくのはもう限界かもしれません。兄上にも随分ご迷惑を掛けてしまっているようですし」
赤二の答えを聞いた赤龍は益々機嫌の悪い顔になった。
「フン、すっかり言いなりだな。そんなにいいのか、その男は」
黒二に抱かれていることを隠し切れているとは思っていなかったものの、面と向かって言われたことがなかった赤二は動揺した。
「あ、兄上、俺はただ――」
「銀龍様と直接話してくる。しっかり留守番していろ。黒二、おまえはもう帰ってくれ」
2人にそう命じると赤龍は龍王の城に行ってしまった。それを見送ると、黒二は赤二に向かって微笑んだ。
「焼き餅かな。可愛い人だ」
その見慣れない赤い瞳を見詰め返しながら赤二は正直に訴えた。
「黒二様……あなたが何をお考えだかわからなくて俺も時々怖くなります」
「君の場合は、わからないのではなくて知る勇気がないだけだろう。それで構わないけどね」
そう答える黒二の声はいつになく寂しそうだった。
「黒二様」
傷つけるようなことを言ってしまったかもしれないと心配して赤二が呼びかけた時には、黒二はもう龍の背に乗り谷の底に消えてしまっていた。
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