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勝手に顔がプレートに近づき、一郎は黄二に支配された唇でプレートの中央に口づけた。すると一瞬で部屋の空気が変わった。強烈な気配、そして光。黄二に体を解放されても一郎がその場に固まって動けずにいると、相手の方から近づいてきた。
「金龍……?」
「おいおい、呼び捨てか? ビビって腰抜けてる割には強気だな」
確かに一郎は圧倒的な強さを感じて怯んではいたが、現龍王と相対した時の気配とは質が違うことも同時に感じていて、その違和感の正体にはすぐに気づいた。
「本物の金龍ではなく、幻影だろう」
「ああ、そうだ。おまえは戦士だな。黄二はどうした?」
「銀龍の城にいるはずだ。彼に導かれてここに来た」
「ふーん」
金龍は腕を組んでじっと一郎を眺めた。恐るるに足らない幻影だと自分にいい聞かせても震え上がりそうになりながら、一郎はそれに耐えていた。
「で、俺に何の用だ? 黄二に連れて来られただけで、おまえ自身に用がないなら俺は帰るぜ」
「俺は……」
幻とはいえ金龍を目の前にすると自信が揺らいだが、自分がやるしかない。一郎は金龍に頭を下げた。
「人間界を救いたい。俺に力を授けて下さい」
「それならもう与えただろう」
「戦士のままでは銀龍に敵いません」
「それでそんな中途半端な龍人になったわけか。愚かだな」
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