第5章 興奮する体

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四郎は龍の爪と炎を受けながら龍に近付いて行った。ほんの一瞬で持続しないから耐えられるが、今まで経験したことのない熱と激痛だ。龍が本物で実際の経験だったら、もう死んでいるに違いない。 死なない為には、何処からどう狙うべきか。 大人になりかけた龍は、子供と違って高く飛べる。四郎のジャンプ力、腕の長さでも喉元に斧を打ち込むのは難しい。 「おまえ、他に弱点あらへん?」 硬いウロコで覆われた龍に向かって、四郎は暢気に尋ねた。 攻撃を受けながら観察している四郎を見て、三郎は苛立った。 「んなもん、切ってみりゃいいだろ!」 三郎は強く剣を握り締めて、それを振り回し始めた。 「危な! 三郎、俺に当たるやろ!」 三郎は何も考えず、とにかく剣を振り回した。痛みだけで実体のない攻撃にびくともしない三郎に、龍の方が苛立って近付いてくる。そこに色々な方向から力いっぱい斬りかかって行く。そして三郎の剣は、龍の手を斬り落とした。次いで悲鳴を上げて仰け反った龍の腹に数回剣を振り下ろすと、龍は裂けて消えた。 「それええな」 三郎を見ていた四郎は、低い位置に来る龍の足を狙い始めた。灰色の龍に比べればずっと太い手足。四郎が、まず指を一本斬り落とすと、それだけで龍はバランスを崩した。 「おまえ可愛そうやな。残像なのに切り刻まれて、ほんまに痛そうや。すぐ楽にしたる」 四郎は龍の足を掴み、振り落とそうとして舞い上がり足を振る龍の力を利用して背に乗った。そして斧で炎を弾き返しながら這い上がった四郎は、髭を掴んで龍の首を仰け反らせた。 すると上を向いた龍は天高く舞い上がった。 「ヤバッ」
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