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「ああ。黒龍くんは……大変だったよ、色々と。黒二先生がいなかったら長になれなかったかもしれない」
「黒二先生というのは、あの黒二ですか? 彼は一体何者なのです?」
黄色い国の長だった黄龍は、黄二が自分より遙かに年上で教員歴が長かったことは知っていたが、黒二についてはほとんど知らない。黄色い国の男達を差し置いて長になった彼について黄龍が尋ねると、黄二は少し考えてから答えた。
「ああ、君に代わって長になられた黒二様だ。あの方は先々代の長の時代に生まれた世界一のご長寿だ。知識と経験においては、龍王様をも上回る」
教え子である長達をくん付けで呼ぶ黄二が黒二に関しては敬語を使ってそう答えると、黄龍は表情を硬くした。
「あなたは黄色い国の長になった直後の彼と直接会ったのですよね。彼は一体どれ位強いのですか?」
「それは――」
答えようとした直後に首輪が締められ、黄二が首輪を指さして苦笑いすると、黄龍は黙って頷いた。このような隔離空間でも龍王が口止めする程の秘密が、黒二にはあるということだ。黄龍はそれ以上の詮索を諦めた。そして青い肉が届いたのを確認すると、3人は食事を始めた。
城に戻っていた銀龍は、それを見届けると目の前に立つ人物と目を合わせた。城内とはいえ龍王と招かれた客しか入れないし外から内部を見聞きすることは不可能な密室だが、銀龍は声を落として彼に話しかけた。
「こんなことをしても長達はもう気付いていると思いますよ」
「そうですね。でもまだ確信はないはずです。今の内に計画を進めましょう」
他の者達の前では決して見せない不安気な表情の銀龍に、落ち着いた声で答えたその人物は、黒二だ。
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