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「あの日、私はあの店にいました。校長に連絡したのは私です」
首輪をつけられ人前で陵辱されたあの日、思い通りに動かせなくても見ることは出来た目で記憶した客達の記憶は、王になった後全て消したつもりだった銀龍は目を見開いた。すると黒二は聞かれる前に答えた。
「あのフロアではなく、オーナーの部屋におりました。オーナーは店員に首輪をつけて監視していたのです。ですから私は彼から状況を聞いただけです。他の客を帰した後、あなたが先生と呼ばれていて金龍様が校長の話をなさっていたと聞いて私が連絡しました。校長はすぐにやってきて意識のないあなたの心身の状態を確認しましたが、念の為に君も診察してくれと頼まれまして……」
「私の記憶を覗き見たと……?」
その時の銀龍は、決して人に知られたくない醜い感情に支配されていた。怒り、憎しみ、そして嫉妬。黄二を経由して一郎の目に映っている本物そっくりな金龍を見た時、それが一気に蘇った。
それでも銀龍は、金龍の幻から目を離さなかった。あの時、黄二の一郎との共感値を最大に引き上げた理由には、一郎の状態を詳細に確認したいという正当な理由と、黄二に仕返しをしたいという理由の他にもう1つあった。
金龍に抱かれる気分を味わってみたかった。
それを全て知っていたと告白された銀龍は、反射的に黒二の記憶を封印しようとしたが、伸ばしかけた手を握りしめて黒二から顔を背けた。
止めたのではない。出来ないのだ。
他の者には決して見ることが出来ない、その屈辱に耐えている横顔を見詰めながら、黒二は答えた。
「あの時のあなたの心情は、あなた以上に理解していると存じます。それで……ずっとあなたにお詫びしたいと思っておりました」
「どうして今更……」
「実は……金龍様は、最初に私を選ばれたのです。龍王を辞めたいからおまえが代われと」
意外な言葉に銀龍が顔を上げると、黒二は告白を続けた。
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