第31章 密室の男達

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考えるより先に行動するタイプの金龍は、裸のまま黒二を金の花園に連れて行き、金の龍の肉を食べるよう促した。黒二は素直に肉を食べ、体には何の異常も現れなかった。そして金龍はその場で再び黒二の体を調べたが、金に染まった部分は見つからなかった。 『まあ急には無理か。よしお前、今日から俺の城で暮らせ』 単に好奇心だろうと考えた黒二は、そのまま城に残り与えられるままに金の龍の肉を食べ続けた。それで具合が悪くなることはなかったが、黒二はどんどん痩せていった。黒二の体は金と相性が悪く、食べた分以上のエネルギーを消化吸収の為に使ってしまい体に蓄積しないのだ。それに気付くと金龍は残念そうに言った。 『なんだお前、銀系か。金でよければ全部譲ればいいだけなのにな。銀じゃ5色を統合するしかねーじゃないか』 何の話かと黒二が驚いていると、金龍は続けた。 『もう妻が死ぬのは見たくない。貴人に食事を与えるのはやめようと思う』 その場で慌てて思い留まらせようとするのは逆効果だと考えた黒二は、お気持ちはわかりますと静かに答えた。すると金龍はお前も再婚しないつもりかと尋ねてきた。それに大していいえと答えると、金龍は言った。 『そいつは良かった。お前、俺に代わって龍王になれよ。王様が独身主義者じゃマズイだろ』 本当に妻を持たないというなら大問題だが、后を失って弱気になっているだけだろうと考えた黒二は曖昧に微笑んで黙っていた。すると金龍は真っ白に変えた黒二の額に手をかざした。記憶を探り、黒二が色を統合出来ない理由を突き止める為だ。 『なんだこれ。まるで箇条書きだな。お前、感情がないのか? それとも完全に切り離して全部忘れるのか? それがお前の長生きの秘訣か? いや……』 金龍は黒二の頭を掴んで青く変えた瞳の奥を覗き込んだ。 『お前さっき、俺の気持ちがわかるって言ったよな。だったら芍薬の記憶に感情がないのはおかしいだろ。あれは嘘か? それとも……』
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