第31章 密室の男達

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黒二が銀龍に詫びたいと言ったのは、その後のことだ。 彼はその経緯について説明し、謝罪した。 「黒龍様はすぐ他の長達に相談しました。当時は黒龍様より年上の長が大半でしたから、長くても数十年経てばまた妻を持ちたくなるだろうという意見でしたが、金龍様が興味を抱かずにいられないような個性的な貴人が生まれるよう試みることと、万が一に備えて後継者の育成に力を入れることになり私も協力しました。しかしどれも間に合わず、あなたが過酷な試練を受けることになってしまいました。まことに申し訳ありませんでした」 黒二の告白を黙って聞いていた銀龍は、真っ直ぐ彼を見詰めて言った。 「私は金龍の策略に乗せられたのでしょう。銀の男になって顔を合わせた時に気付きました。でもそれが全てではありません。そこには明確に私の意志もあった。世界で最も王に相応しいのは私だと自覚したのです。私が試練を受けたのが間違いだったと言うなら、別に相応しい男がいたとお考えですか?」 「いいえ。世界で最も王に相応しいのは今も昔も銀龍様です。私どもの試みが成功していれば、あのような形ではなく王になられたに違いないと申し上げたかったのですが、言葉が足りず失礼いたしました。銀龍様、どうぞそのまま歴代で最も美しい王としてこの世界をお守り下さい。人間界の問題は私が引き受けます」 「頼みましたよ」 銀の龍の力では人間界を完全に消し去ることは出来ない。 最悪の汚染物質だけが残り、龍人界に襲いかかる。 人間界の真下に結界を張り、人間界に触れてみてはっきりそれがわかった。しかしこのまま人間界を放置していればやがて恐ろしいことが起きる。予知夢を思い出した銀龍は軽く頭を振って話題を変えた。 「ところで……あなたはいつまで黒二と名乗り続けるのですか? そろそろ実態に相応しい名に改名されてはいかがです?」 「黄色い龍を食べ続けておりますが、どんなに食べても黄龍と名乗れる体になることはありません。現状では黒と黄が2等、赤が3等、青と白が4等といった所でしょう。名前に全て盛り込むには長過ぎますし、食事で色の等級まで変化する特異体質ですから……」 「全龍で良いではないですか」
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