第32章 麗しく芳しき妻達

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気持ちはいい。ただやはり物足りない。相手の方はどうなのだろうと思って目を開くと頬を紅潮させた可愛らしい顔があった。 「可愛いな。キスしよか?」 女性はもちろん喜んでキスしてきたが、近づきすぎてその顔が見えなくなると頭の中に男の声が蘇ってきた。 やっぱりキス好きなんだ (三郎……) 代わりに抱き寄せた背中は彼よりずっと華奢で、でも温かかった。 女性達を満足させて起き上がると四郎は疲れを感じたが、ゆっくり風呂に入ったら元気になった。それでも女性達は一度城に戻ってきちんとした食事を取った方がいいのではと助言したが、四郎は帰らなかった。 ただし夜は1人で寝かせて欲しいと頼むと、施設職員の女性が部屋に案内してくれた。 「ホンマは女性以外がここに泊まったらアカンの?」 「禁止されているわけではありません。ただ理に適わないから誰もしないだけです。男性は果樹園の肥料等の物資を運んで来ますが長居することはありません。貴人様は時々私達と交わる為にいらっしゃいますが、お疲れになるので終わればすぐに帰られます。牡丹様、本当にお体は大丈夫ですか?」 「ああ、俺普通の貴人とちゃうから平気や。あ、その時々来る貴人さんに知れたらマズイか?」 「え?」 女性は一瞬首を傾げたが、人間達の暮らしを思い出して四郎の誤解に気付いた。 「私達は特定の貴人様に囲われているわけではありません。凄く女性がお好きな貴人様はいらっしゃいますが、特定の女性を気に入られることはありません。女性の方が特別にお慕いすることはよくありますが、私達と交わる貴人様は皆男性の妻でいらっしゃいます」
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