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「牡丹様は龍の赤ちゃんを実際にご覧になったことはありますか?」
四郎が可愛いと言ったのは貴人のことだったが、女性達は彼が抱いている龍を見ていた。確かに、龍の赤ちゃんもよく見ればそれなりに可愛い。
「いやあ……子供しか……」
その子供の龍を殺したなんて絶対に言えないとドキドキしながら答えると、女性は笑顔で言った。
「御自分のお子様は特別に可愛いそうですよ。牡丹様も早く可愛い赤ちゃんをご出産出来るといいですね」
「え、あ……せやな……」
引きつった笑顔で答えると、四郎は菓子を作っている女性達に近づいた。
「これ果物以外の材料は?」
「緑の森で取れる木の実と樹液です」
「へえ、美味しそうやな。なあ、俺も何か手伝える?」
女性達は喜んで四郎に菓子作りを教えてくれた。そして菓子が焼き上がると、皆で味見をしながらお茶を飲み、色々な話を聞いた。彼女達の仕事は様々で、職場であった出来事を記録映像を見せながら報告しあうようだ。日用品を製造する者、女児の教育に従事する者、皆生き生きと話をする。誰1人職場の上司の悪口や愚痴は言わない。
「なあ、仕事で辛いこととかないんか?」
四郎がそう尋ねると女性達は顔を見合わせ、施設職員の女性が答えた。
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