第32章 麗しく芳しき妻達

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「仕事は義務ではありませんから、無理して働く必要はないのです。そういう女性達は下のランクの集落に行きます」 「女性にもランクあるんや」 「はい。女性は出産と仕事の実績に応じて5段階に分けられます」 最上位は城下にある集落で、そこには国内で栽培される全種の果樹が植えられた果樹園があり、輸入される食料や新たに開発された日用品も彼女達に優先的に与えられ、更にそこで選ばれると王都に移住が可能になる。一方最下位の集落の果樹園には栽培が容易な1、2種類の果樹しかなく、物資も必需品しか届けられないそうだ。それとは別に妊婦と産後間もない女性達の集落と少女達の寄宿舎があると説明してくれる美しい女性達を見て、四郎はずっと疑問に思っていたことを確認した。 「なるほど。ここは上位の集落か。せやから皆若くて綺麗なんや」 辺鄙な場所に集められた老人達を想像して四郎が眉をしかめると、女性は首を振った。 「年齢は関係ありません。きちんと食事をして定期的に貴人様と交わっていれば体が劣化することはないのです」 「えっ、ほな……」 死なないのかと問いかけた時、相手の女性が倒れた。隣の席の女性が彼女を抱き留め、別の女性が様子を確認し、他の女性達も彼女の周りに集まってきたが皆冷静だ。だからきっと大したことではないのだろうと思いながら彼女達に近づいた四郎は、女性の言葉に耳を疑った。 「亡くなったようです」 「ええっ? 嘘や、なんで? ついさっきまで元気やったし、いきなりそんな……」 「そういうものなのです。牡丹様、どんなに似ていても私達は人間ではありません。牡丹様、あなたももう人間の体ではないことをお忘れないよう……」 女性の声が、遠くなっていく。視界がぼんやりして、姿も見えなくなる。
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