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「これが赤い谷?」
「そうだ」
一郎は答えながら次郎がいるのと反対の方向へ小さく首を振った。隣へ来いという意味だ。
一瞬眉を顰めたものの指示通り円卓に近付いて来た三郎を、次郎は目で追った。そして三郎が席に着くと、一郎は説明を始めた。
「これはほんの一部だ。幅は狭いが、全長1キロ以上だろう」
1キロと言ったら、家から学校までの距離程度だ。三郎はつまらなそうに答えた。
「なんだ。大した広さじゃないじゃん」
しかしそれを聞いた四郎は顔色を変えた。
「いや、待て。ほんの一部て……これ縮尺いか程ですか?」
「ああ、このハエが羽根を広げたら大体1メートルだから――」
「1メートル!?」
四郎は慌てて手を引っ込め、五郎にすがった。
「大丈夫だ四郎、赤バエは死肉しか食べないし、見ての通り普段はかなり上空を旋回している」
「でも地面にもデカイ虫這ってるんちゃう? 俺、虫はあかんわ」
本当に気味悪そうに顔をゆがめて映像を眺めている四郎を見て、三郎が言った。
「なんで今更驚いてるんだよ。デカイ虫がいるって、さっき話してたじゃないか」
「せやけど、めいいっぱい羽広げてもせいぜい30センチ位やと思うてたわ。てか10センチでもビビるやろ。ハエやで?」
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