第5章 興奮する体

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「これが赤い谷?」 「そうだ」 一郎は答えながら次郎がいるのと反対の方向へ小さく首を振った。隣へ来いという意味だ。 一瞬眉を顰めたものの指示通り円卓に近付いて来た三郎を、次郎は目で追った。そして三郎が席に着くと、一郎は説明を始めた。 「これはほんの一部だ。幅は狭いが、全長1キロ以上だろう」 1キロと言ったら、家から学校までの距離程度だ。三郎はつまらなそうに答えた。 「なんだ。大した広さじゃないじゃん」 しかしそれを聞いた四郎は顔色を変えた。 「いや、待て。ほんの一部て……これ縮尺いか程ですか?」 「ああ、このハエが羽根を広げたら大体1メートルだから――」 「1メートル!?」 四郎は慌てて手を引っ込め、五郎にすがった。 「大丈夫だ四郎、赤バエは死肉しか食べないし、見ての通り普段はかなり上空を旋回している」 「でも地面にもデカイ虫這ってるんちゃう? 俺、虫はあかんわ」 本当に気味悪そうに顔をゆがめて映像を眺めている四郎を見て、三郎が言った。 「なんで今更驚いてるんだよ。デカイ虫がいるって、さっき話してたじゃないか」 「せやけど、めいいっぱい羽広げてもせいぜい30センチ位やと思うてたわ。てか10センチでもビビるやろ。ハエやで?」
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