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「1メートルだって、たかがハエだろ?」
三郎が騒ぐ四郎をバカにすると、一郎は映像の一部を拡大しながら何かを探し始めた。
「大抵の虫は問題ない。ただこいつは少しやっかいだ。攻撃性が高く、噛まれると体が麻痺する。そこに龍や別の猛獣が現れたらお終いだ」
一郎は、その虫を探し出すと原寸大に拡大して見せた。全長2メートルのムカデのような生き物だ。それは頭を上げ、大きな鎌のような口を左右に開いて三郎に突進してきた。三郎は思わず剣を構えたが、映像は剣をすり抜けて消えた。映像であることは承知していても本当に怖かったが、三郎はそれを悟られまいと平気な顔をして尋ねた。
「こんなの一匹ずつ倒せって言うのか?」
「いや、その必要はない。行く手に現れて邪魔になる物だけ片付ければいい。目指すのは……」
一郎はまた別の場所を拡大して見せた。中央に木のような、大きなサボテンのような植物がある。色は他のどの動植物より濃い赤だ。
「何これ」
「井戸の木だ。周辺の動植物に地底の赤い水を供給している。これを切り倒せば周囲一体の動植物が死に絶える」
「周囲ってどのくらい?」
「100メートル四方」
「じゃあ……全部で10本くらい?」
「ああ。今日3本切ってきたから、残りは7、8本だろう」
「なーんだ。すぐ片付くじゃないか」
三郎がそう言うと、次郎がクスリと笑った。
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