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「何が可笑しいんだよ」
「いえ。実際には虫一匹殺したこともないのに大した自信だと感心いたしまして」
そう言って次郎は更に笑い続けたが、途中から様子がおかしくなった。
笑っているというより、息苦しそうだ。
「大丈夫か、次郎?」
「一郎様、私は……もう……」
「わかった。もう下がっていい」
「はい……」
腹を抱えるようにして立ち上がった次郎に、四郎は思わず手を差し伸べた。
「大丈夫ですか? 部屋まで送って――」
「触らないで!」
次郎は、四郎に触れられた瞬間ビクンと大きく体を震わせて、その手から逃れた。
そんなに嫌かとショックを受けている四郎に、次郎は言った。
「ごめんなさい。私は大丈夫ですから、一郎様のお話をしっかり聞いて下さい」
「はい……」
部屋を出て行く次郎を、五郎も心配そうに眺め自分が送ってもいいかと一郎に目配せしたが、一郎は首を振った。
「あいつ、怪我でもしてるの?」
「いや。少し赤い水を飲んでしまっただけだ。心配ない」
「赤い水って毒なの?」
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