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「毒なら五郎に癒せる。むしろ栄養だ。ただ、我々には濃すぎる。だからこいつを切る時には、極力水を浴びぬよう注意しなければならない。それにこいつはある程度自分の意志で動くことが出来る。植物だと思って甘くみるな。明日は5人で行く」
そう言うと、一郎は立ち上がった。
「五郎、後は頼む」
「はい」
一郎が出て行くのを不審そうに見送ると、三郎は悪態をついた。
「あいつももうお休み? 暢気だな」
「三郎、いい加減にしろ。木を一本倒すということは、その木が支配する周囲一体の動植物を全て敵に回すということだ。それに谷が狭まれば動物は密集してくる。明日は今日よりやっかいな戦いになる。舐めてかかれば命取りになりかねない」
「せや。2メートルのムカデに噛まれて、ようわからん獣に殺されて、1メートルのハエに食われるで」
そう言われてさっきのムカデを思い出した三郎はゾッとしたが、開き直った。
「じゃあどうしろって言うんだよ。訓練場でそいつ等とも戦えるの?」
「それも出来なくはないが、もっといい方法がある。今ここで谷に現れる主な動植物と対処法を教えるから、しっかり覚えろ」
「はー、お勉強やて」
「時間がない。始めるぞ」
四郎は既に退屈したようにため息をついたが、五郎は構わず説明を始めた。三郎も勉強は好きではないが、五郎の話を熱心に聞いた。
三郎は決めていた。明日絶対一番に井戸の木に辿りついて倒してみせると。
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