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翌日、5人は予定通り赤い谷に向かった。
進む道は、穴から落ちた場所から城までの道より鬱蒼としていた。
「ここには変な虫とか出ないやろうな?」
四郎は五郎に向かって尋ねたが、前を歩いていた次郎が振り返って答えた。
「ここは不毛の地。生えてくるのはこの枯れたような雑草だけで、他の動植物は繁殖出来ません。ただし迷い込まないという保証はありませんから、気は抜かないで下さい」
「はい……」
頷く四郎に向かって微笑むと、次郎は前に向き直り、先を歩く一郎に駆け寄った。
「次郎ちゃんすっかり元気やな。なんやご機嫌さんやし」
「そりゃ……」
五郎は何か言いかけたが、怪訝そうに見上げる三郎と目が合うと答えるのを止めて大股で歩き出した。
「無駄話するな。行くぞ」
三郎は、置いて行かれないようにペースを上げて歩きながら、確かに機嫌良さそうに少し先を歩いている次郎を見た。昨日とは別人だ。昨日の次郎は、様子がおかしい時の光に似ていた。
(てか次郎って……よく見ると光に似てる)
そんなことを考えながら一郎に話し掛けている横顔をじっと眺めていると、四郎にからかわれた。
「なんや。次郎に見惚れとるのか?」
「そ、そんなんじゃねーよ」
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