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「ええやん、隠すなよ。ほんまに美人やなあ。次郎ちゃんは」
枯れたような草木と岩が転がるだけの薄暗い道を進むと、突然視界が開けた。
断崖絶壁の下に傷口のようにパックリ開いた赤い谷が見える。
「えっ、ここ降りるんか?」
「体を傾けすぎず、立てすぎず、一気に滑り降りろ」
そう言うと一郎はひらりと舞い降り、崖に突き立てた刀を支えに一気に下って行った。
「えっ、武器折れへん?」
「そんなに柔には出来ていません」
答えた次郎は同様に弓を支えに滑り降りて行った。
「五郎ちゃんどうするの?」
「俺は這い降りる。下で受け止めてやるから滑って来い」
そう言うと、五郎は四つん這いになり、獣のような速さで降りて行った。
「あいつ化け物やな……」
呆気にとられている四郎の横で、決心した三郎が一歩前に出た。
「え、三郎行くんか?」
三郎は無言で滑り降り始めた。
「え、ちょい待てや!」
四郎は慌てて後を追ったが、重い武器を上手くコントロール出来ない。
「無理や、うわっ!」
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