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斧はとうとう四郎の手を離れ、谷底に向かって飛んで行ってしまった。
「アカン、斧落ちた、ファー!」
四郎自身はほとんど転げ落ちるように斜面を降り、最後に五郎に抱き留められた。
「サンキュー、五郎ちゃん。あーケツ痛」
「ここか?」
五郎が尻を一撫ですると、痛みは嘘のように消えた。
「あんっ! あ、治った。スゲーな五郎ちゃん。で、俺の武器と……三郎は?」
三郎は武器を手離すことはなかったが、途中で足を滑らせてほぼ転げ落ちてきていた。
「いるよ」
そう言って立ち上がったものの、三郎は足を挫いていた。気付いた五郎は三郎の前に屈み込み、足に手をかざした。暖かい波動を受けた三郎の足は、元通りになった。
「あんたがいれば、怪我しても平気だな」
すると素直でない三郎を一郎が一喝した。
「おまえが平気でも五郎が消耗する。無駄に体力を使わせるな」
三郎達が立っている場所には何もないが、一郎の背後には赤い植物が生い茂っている。その中から、斧を手にした次郎が出て来た。
「ムカデがいたので、お借りしました。アレには斧の方が適しておりますので」
そう言って軽々と斧についたムカデの体液を振り払うと、次郎は四郎に武器を返した。
「え……次郎ちゃん、これ使えるの?」
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